特許取得にかかる費用を徹底解説!出願から維持までステップに沿ってコストを理解しよう

特許を取得することは、企業や個人にとって大きなメリットがあります。独自の技術やアイデアを保護することで、他人が無断で発明を使用するのを防ぎ、20年間の独占権を得ることができます。特許権取得によって、製品リリースの際に宣伝効果を高めたり、ベンチャーキャピタルなどの投資家からの資金調達に有利に働いたり、またライセンス収入を得るチャンスなども期待できます。

ところで、日本で特許を1件取得するには、一般的にトータルで80万円ほどの費用がかかります。特許を取得する際にかかる費用は大きく分けて特許庁費用と弁理士費用があります。

本記事では、特許を取得するまでにかかる費用を出願から維持までステップに沿って項目ごとに詳しく解説していきます。

1. 特許取得までの基本的な流れ

特許取得のプロセスは、主に以下のように進みます:

  1. 出願前の準備
    • 先行技術調査(特許調査を行い、既存の特許と重複しないか確認します。)
    • 発明相談(必要に応じて発明の特許性、有用性、市場性などを弁理士に相談します。)
  2. 出願
    • 出願書類を作成し、特許庁に提出します。
  3. 審査請求
    • 出願後、特許庁に審査請求を行います。
  4. 中間処理
    • 特許庁からの通知に対応し、必要な修正や反論を行います。
  5. 登録
    • 審査に合格すれば、特許料を支払い、特許権を取得できます。

2. 出願前準備の費用

先行技術調査

特定の技術や発明に関する特許出願を行う前に、その技術や発明が既に公開されているかどうか、または特許として保護されているかどうかを調査する重要なプロセスです。この調査により、発明が新規性や進歩性を持っているかどうかを確認し、特許の取得可能性を評価します。

もっとも、世界中の全ての情報を調べることは、技術的・コスト的な問題から現実的に難しいため、主に特許庁のデータベース「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat )」や民間の特許情報データベースを用いた検索を一定程度行うことが多いです。

なお、特許事務所や専門の調査会社に依頼することもできます。調査の内容や規模によって金額が変わりますが、同様の技術の特許が既に取得されているかどうかなど簡易的な調査であれば費用は5万円〜10万円ほどです。

特許事務所の相談費用 (発明相談)

初めて特許を出願する場合、専門家である弁理士に相談することをお勧めします。

発明相談では、発明の内容を弁理士がヒアリングし、その発明の技術的特徴や先行技術との差異点などを整理していきます。これにより、次のステップで特許出願書類を作成する際に、発明の本質を捉えた良い書類を作成できる可能性が高まります。また、ヒアリングの過程で、その発明を発展させる新たなアイデアが浮かぶこともあります。

発明相談の費用は、内容や範囲により料金体系もさまざまで、1時間あたり10,000円〜20,000円で行っているところなどがあります。発明相談に「先行技術調査」が含まれることもあります。

なお、発明相談を次のステップで説明する出願費用の一部として位置付け、発明相談自体は無料で対応している特許事務所も少なくありません。
このように発明相談の費用は特許事務所によってさまざまですので、相談前によく確認しましょう。

3. 特許出願時の費用

出願手数料(特許庁に支払う費用)

特許庁に特許出願を行う際には、出願手数料は特許印紙で支払います。

特許印紙代は1つの出願につき一律で14,000円です。

なお、オンラインではなく、書面を郵送や窓口差出しして手続きする場合には、別途、電子化手数料がかかります。(2,400円+書面の枚数 × 800円)

電子化手数料は、特定の手続きを特許庁に書面で提出した場合に、その書面を電子化するために納付する手数料です。特許庁では電子出願を推進しており、電子出願で可能な手続きを書面で行う際にこの手数料が必要です。

特許事務所(弁理士)に手続きを依頼する場合は、オンライン手続きをすることがほとんどなので電子化手数料はかかりません。一方、自分で手続きをする場合には、オンライン手続きをするためのシステムの準備に特殊な手間がかかるため、個人の方などは郵送や窓口差出で手続きをして、電子化手数料を支払う方がかえって簡便であるかもしれません。

弁理士費用

特許出願書類の作成には専門的な知識が必要です。特許法などの数多くのルールに則った書面を作成しなければ、発明自体の出来にかかわらず、特許を受けることはできません。また逆に、その発明の本質的な特徴を捉えてそれを適切な文章に落とし込めなければ、たとえ特許になったとしても、有効な権利内容にはなりません。そのため、特許出願書類の作成は、自身が特許の専門家でない限りは、特許事務所(弁理士)に依頼した方がうまくいくことが多いでしょう。

弁理士や特許事務所にかかる費用は案件の複雑さや依頼先によりますが、一般的に30万円から50万円程度です。

弁理士などの代理人を通さずに自分で出願する場合にはこの費用はかかりませんが、特許庁の「特許行政年次報告書2024年版データ」によると本人出願率は6%ほどに留まっており、弁理士に依頼をして出願をしているケースが圧倒的に多いようです。

4. 審査請求時の費用

特許出願後、特許庁に対して審査を請求するための費用です。

特許出願の場合、出願しただけでは特許庁の審査を受けることができません。審査を受けて特許権を取得するためには、特許出願日から3年以内に審査請求を行う必要があります。この期限を過ぎると、特許出願は取り下げられたものとみなされますので注意が必要です。

審査請求手数料(特許庁に支払う費用)

出願後、特許庁に審査を進めるよう請求するための手数料を特許印紙で支払います。

審査請求の印紙代は、138,000円+(請求項の数×4,000円)です。

このように、特許印紙代は「請求項の数」によって変動します。

なお、「請求項」とは、特許出願書類において、特許権の付与を求める発明の内容(範囲)を文章で記載したものであり、1つの出願書類の中に複数記載することができます。

請求項の例:

【請求項1】

箸と爪楊枝が挿入保持される貫通孔を備えた保持部が前記保持部とは別体の机の天板裏の支持部に固定されたことを特徴とする箸ホルダー。

(特許第6995296号「箸ホルダー」の特許)

特許庁の「特許行政年次報告書2024年版データ」によると特許出願時における平均請求項数は9.5です。
仮に請求項の数を10とした場合、審査請求手数料は178,000円となります。

出願印紙代が14,000円であったことと比べると、審査請求印紙代は高額となっていますが、特許出願の審査には非常に労力がかかるため、それなりの金額設定になっています。あまり安すぎると、特許権の取得にそこまで本気ではない人も気軽に審査請求をしてしまい、審査全体を圧迫してしまう弊害もあるため、そう考えれば納得感のある金額ではないでしょうか。


なお、オンラインではなく書面で手続きする場合には、別途、上述の電子化手数料がかかります。

また、中小企業等、一定の要件を満たす出願人の場合は、減免手続きをすることにより、審査請求印紙代について1/2以上の減額を受けることができます。

弁理士費用

弁理士に審査請求書の書面作成と手続きを依頼する場合、費用は10,000円〜20,000円程です。

なお、中小企業等の減免手続きを弁理士に依頼することも可能で、費用は数万円程度です。

早期審査請求時

一定の条件を満たした場合、審査を早めて早期に特許取得を目指す早期審査請求を行うことができます。

特許の早期審査請求を行うと、通常の審査に比べて審査開始までの期間が大幅に短縮されます。通常の審査では、審査開始までに平均10ヶ月ほどかかりますが、早期審査請求を行った場合、多くの場合で平均3ヶ月ほどで審査が開始されることが期待されます。

早期審査請求にあたり特許庁の費用はかかりません
弁理士に依頼すると費用は20,000円〜30,000円程です。

5. 中間処理費用(審査課程での追加費用)

特許出願の審査中に特許庁から拒絶理由通知(審査不合格の一次通知)が届いた場合、それに対して、意見書や補正書の提出が可能です。

意見書とは、特許庁からの拒絶理由通知に対して出願人が反論をするための書面です。

補正書とは、拒絶理由通知に対して出願内容を修正するための書面です。

意見書と補正書の提出にあたっては、特許庁への費用(印紙代)は発生しません。

弁理士費用

中間処理対応として、意見書や補正書の作成と手続きを弁理士に依頼する費用は、案件の複雑さによりますが、10万円から20万円程度です。

意見書や補正書による対応には、特許庁からの拒絶理由通知の内容の把握、拒絶の根拠となっている先行技術文献の読み込み、先行技術と本発明との差異点や進歩性の精査などを行った上で、それをロジカルかつ特許法のルールに則った形で文書に落とし込むことが必要なため、相応の労力と専門技能が求められます。そのため、中間処理対応の弁理士費用もそれなりの金額がかかります。

なお、特許庁から拒絶理由通知が発行されずにすんなり特許が認められる場合もありますが、14%ほどで割合としては高くありません。(PPH「Patent Prosecution Highway、 特許審査ハイウェイ」より)。

大半の場合は拒絶理由通知が来るケースが来ると考えておいて良いでしょう。

しかし、適切な中間処理対応を行うことで、最終的な特許査定率は7〜8割ほどとなりますので、本気で特許を取得したい人にとっては、中間処理対応の費用も必要経費として見込んでおく必要があります。

拒絶査定への対応

拒絶理由通知で応答したにも関わらず拒絶査定となっても再チャレンジする手として拒絶査定不服審判を起こすことが可能です。
この審判では、特許庁の審判部が担当し、特許出願が適法かつ特許要件を満たしているかどうかを再評価します。日本特許庁の統計データによれば、拒絶査定を受けた出願のうち3割ほどが不服審判を請求しています。不服審判が認められ、特許が付与されるケースは約7割ほどです。


拒絶査定不服審判に必要な印紙代は、49,500円+(請求項の数×5,500円)です。


弁理士費用は案件の複雑さにより異なりますが、15〜25万円ほどです。

6. 登録時の費用

登録料(特許料)

特許庁に特許が認められ特許査定がおりた際、特許権を得るためには登録料(特許料)の納付が必要です。

特許権の登録料は、1~3年分まとめて支払うことになっています。

費用は1年当たり4,300円+(請求項の数×300円)です。※

そのため、仮に請求項の数が10だとすると、初回に支払う登録料(3年分)は21,900円になります。

※ 平成16年(2004年)4月1日以降に審査請求をした出願の場合

中小企業等の一定の要件を満たす出願人の場合は、減免手続きをすることで、1/2以上の減額を受けることができます。

弁理士費用(登録時)

登録料(特許料)の納付手続きを弁理士に依頼する場合は手数料が発生します。

弁理士の手数料として10,000円程度の費用がかかります。

特許事務所によっては登録に至った成功報酬を支払う料金体系のところもあります。
金額は10〜15万円ほどです。なお、拒絶査定不服審判の請求などが含まれるとプラス20万円ほどになることもあります。

7. 特許維持費用

維持年金(特許維持費)

特許権を維持するためには、毎年維持年金を支払う必要があります。維持年金の計算は以下の表のように行われます。維持年金は年々増加し、1年目から3年目は年額0.7万円程度、4年目から6年目は年額2万円程度となります(請求項数を10とした場合)。

1年目から3年目の維持年金は、上述の登録料(特許料)に相当します。

項目金額
第1年から第3年まで毎年 4,300円+(請求項の数×300円)
第4年から第6年まで毎年 10,300円+(請求項の数×800円)
第7年から第9年まで毎年 24,800円+(請求項の数×1,900円)
第10年から第25年まで毎年 59,400円+(請求項の数×4,600円)

※ 平成16年(2004年)4月1日以降に審査請求をした出願についての特許料

※ 第21年から第25年については、延長登録の出願があった場合のみ

中小企業等の一定の要件を満たす特許権者の場合は、減免手続きをすることで、1〜10年目の特許料について1/2以上の減額を受けることができます。

特許権を維持管理するためや支払期限の管理のために弁理士など代理人に依頼することも可能です。費用は1〜3万円ほどです。

出願前から登録、維持までにかかる一連の費用を下表に示します。

項目内容特許庁に支払う費用弁理士等の代理人に支払う費用
出願前準備
先行技術調査費用既存の特許と重複しないか確認するための調査5万円~10万円
特許事務所の相談費用弁理士への初回相談1万円~2万円(1時間あたり)
特許出願14,000円30万円~50万円
審査請求138,000円+(請求項の数×4,000円)1万円~2万円
・早期審査請求書類作成、手続き2万円~3万円
中間処理意見書・補正書
書類作成、手続き
10万円~20万円
登録時
特許料(1年~3年)1年あたり
4,300円+(請求項の数×300円  ※
1万円
成功報酬(10~15万円)
特許維持
維持年金年次費用1年目~3年目: 年額0.7万円程度
4年目~6年目: 年額2万円程度
1万円~3万円(年)

※平成16年(2004年)4月1日以降に審査請求をした出願の場合

8. 費用を抑えるためのポイント

特許庁の減免制度

特許庁は、中小企業、個人、大学を対象に審査請求費用や特許料の減免制度を提供しています。これは、資金や人材に制約のある中小企業、個人発明家、大学研究者が知的財産権を取得しやすくするための制度です。

従業員数や資本金の額などの一定の要件を満たしている場合、審査請求料と特許料(1〜10年)がそれぞれ1/2〜無料に減免されます。

2019年以降、審査請求を行う際には、減免申請書を提出する必要がなくなりました。手数料に関する特記事項を記載するだけで、減免制度の適用を申請できます。また、減免に関する証明書類の提出も不要となっています。

参照元:特許庁HP https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/genmen/genmen20190401/index.html#2

補助金や助成金

地方自治体の支援制度、また中小企業やスタートアップを対象とした特許取得支援制度などが活用できる場合もあります。どんな団体の補助金や助成金があるか、金額や条件を確認してみましょう。

〈東京都〉 

特許調査費用助成事業 

東京都知的財産総合センターによる都内の中小企業を対象にした知的財産の支援の一つです。
東京都が設立し、公益財団法人東京都中小企業振興公社が運営しています。

 

事業内容:明確な事業戦略を持つ中小企業者の方が、開発戦略策定等を目的に他社特許調査を依頼した場合、その要する費用の一部を助成します。

助成内容: 助成率 1/2以内

助成限度額 100万円

助成対象経費 他社特許調査委託に要する経費 

東京都知的財産総合センター( https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/josei/chosa/ )より抜粋

〈大阪府〉

大阪府ではものづくり企業支援として「知的財産の発明考案、実用化、活用支援」を行っています。特許をはじめとする知的財産に関する相談や知的財産マッチング事業、中小企業向けの特許情報プラットフォーム(J-Platpat)の検索システムを利用するための講座の開催など、さまざまな支援が行われています。

大阪府   ( https://www.pref.osaka.lg.jp/o110070/mono/gijutsu_shouhin/index.html )より抜粋

〈中小企業向け〉

中小企業向けの補助金と助成金をまとめたポータルサイトなどで現在募集中のものをチェックすると良いでしょう。全国の都道府県や市を単位に行われている知的財産活動助成金の募集などを調べることができます。

・中小企業庁 ミライをサポート https://www.mirasapo.jp/subsidy

中小企業・小規模事業者向けの補助金・給付金等の申請や事業のサポートを目的とした、国のWebサイトもあります。

・ミラサポplus 中小企業向け 補助金・総合支援サイト https://mirasapo-plus.go.jp/request/

9.海外展開の場合

特許は属地主義のため日本で取得した特許は日本国内でのみ有効です。
発明を他国でも保護したい場合は、その国ごとに特許を出願し取得する必要があります。外国での特許取得にはPCT国際出願などの選択肢がありますが、費用はトータルで200〜300万円など高額になります。

なお、海外出願に関する補助金はさまざまなものがあります。

むすび

特許取得にかかる費用は多岐にわたるため、各段階での費用をしっかりと把握し、計画的に進めることが重要です。特許庁に支払う手数料と弁理士費用を分けて考え、中間処理や維持費用を予測しながら予算を立てましょう。補助金の活用も視野に入れると良いでしょう。

弁理士費用が高額で複雑な理由には、特許取得のハードルの高さが挙げられます。弁理士には高度な専門知識と経験、複雑な特許法や技術に関する深い理解が求められます。最近では、知的財産分野でもAIの活用が進んでおり、迅速で精度の高い調査や特許出願における文章作成が期待されています。

特許事務所を選ぶ際には、事務所の規模、対応力、実績、費用構造、サポート体制などの観点から費用と質のバランスを見て、自分に合ったところを見つけることが大切です。

多くの特許事務所は初回相談を無料で行っている場合があります。この機会を利用して、実際に相談し、信頼できるかどうかを直接確かめると良いでしょう。

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