Toreru Media は【毎週火曜日】+α で更新!

特許出願から登録までの流れを徹底解説!

この記事では、発明の整理から特許出願、審査、特許登録に至るまでの日本国内における一連の流れ(特許出願の流れ)を詳しく解説します。 各ステップで必要な書類や手続き、要する費用や期間の目安、そしてよくある注意点・トラブルについても取り上げます。また、オンライン出願の方法とメリット、出願公開や審査請求の意味・期限、登録後の年金(維持費用)や権利行使についても説明します。フロー全体を図示しながらポイントを整理していきますので、初めて特許出願する際など全体像を把握したいときにぜひお役立てください。

0. 特許出願の全体フロー

特許出願から登録までの一連の流れは、上図のように大きく数段階に分かれます。

まず発明の事前準備(技術内容の整理や先行技術の調査)を行い、有効な発明か確認します。

準備が整ったら特許出願(出願書類の提出)を行い、その後、方式審査(書類形式のチェック)を経て、出願から1年6か月後に出願公開が行われます。

出願後、出願審査請求を行うことで初めて特許庁での実体審査(発明の特許性の審査)が開始されます。

審査の結果、問題がなければ特許査定(特許を認める決定)が出され、問題があれば拒絶理由通知が送られ意見書・補正書の提出で対応します。

それでも認められない場合は拒絶査定となり、必要に応じて不服審判(異議申立て)へ進みます。

特許査定に至った場合、特許料の納付(初回は第1~3年分を一括納付)により特許権が設定登録され、特許証が発行されます。

登録後は年金(年次維持料)の支払いを継続して権利を維持し、発明の実施独占やライセンス供与、侵害対応など権利行使を行っていきます。

以下、各ステップについて詳しく見ていきましょう。

1. 発明の整理と出願準備(先行技術調査等)

特許出願に臨む前に、発明内容の整理先行技術の調査を行いましょう。既に類似の技術や発明が世に出ていないかや、自分の発明の特徴点を把握することはとても重要です。もし自分の発明と同じような技術が既に公開・特許化されていれば、後から出願しても特許を受けることはできませんし、逆に他人の特許権が成立している技術を無断で実施すれば侵害となる可能性もあります。このため、特許庁のデータベース(J-PlatPat)等を用いた先行技術文献調査を行うことが推奨されます。専門の調査機関や特許事務所に依頼することも可能です。

また、日本は先願主義を採用しており、同じ発明については「先に出願した者だけが特許を得られる」仕組みです。したがって有望な発明は、できるだけ早く出願手続きを行うことが肝心です。特に他者と競争になりそうな技術分野では、出願の早さが権利化の成否を左右します。

発明の公表タイミングにも注意が必要です。 出願前に論文発表や製品の展示・販売などで発明内容を公開してしまうと、新規性を喪失するおそれがあります。日本の特許法第30条には例外規定があり、一定条件下で出願前公表の救済措置も設けられていますが(詳しくはこちらの記事を参照)、公表前に出願を済ませるのが安全です 。発明の詳細を第三者に説明する場合にも、出願前であれば秘密保持契約(NDA)を結ぶなど極力情報流出を防ぎましょう。

2. 特許出願の手続き(必要書類の準備と提出方法)

2.1. 必要書類の作成

出願前準備が整ったら、具体的な出願書類を作成します。特許出願に必要な主な書類は以下のとおりです :

  • 特許願(願書) – 出願人や発明者、発明の名称などを記載する書面
  • 明細書 – 発明の詳細な内容を記載した説明書(発明の目的・構成・効果などを具体的に記載)
  • 特許請求の範囲 – 特許で独占したい発明の範囲を特定する書面(クレームとも呼ばれる)
  • 必要な図面 – 発明の理解に図面が必要な場合に添付(図面が不要な発明では省略可)
  • 要約書 – 発明の要点をまとめた概要(公開用に利用される)

これらの書類は所定の様式・形式で作成する必要があります。特許庁やINPITが公開している書式ガイドやテンプレートを参照するとよいでしょう。特に明細書や特許請求の範囲は権利の内容を決める重要な部分です。記載に不備があると権利が弱くなったり、審査で拒絶される原因にもなるため、専門知識が求められます。多くの場合、この書類作成は弁理士(特許事務所)が代行しますが、弁理士が適切な書類を作成できるようにするためにも、発明者自身が発明内容を正確に伝えられることが大切ですので、説明できるように準備しましょう。

2.3. 出願の方法:書面出願 vs オンライン出願

書類が整ったら、いよいよ特許庁への出願手続きを行います。出願方法には書面(紙)による出願オンライン(電子)出願の2種類があります。

  • 書面出願の場合:作成した出願書類一式を印刷し、特許庁宛に提出します。用紙は日本工業規格(JIS)のA4用紙を使用し、文字は黒色で明瞭に印字または記載します。提出は特許庁の受付窓口へ持参するか郵送で行います。書面で出願する際は、特許庁に納付する出願料として特許印紙を願書に貼付します(収入印紙では不可)。日本の特許出願料は14,000円と定められており 、これを印紙で納める形です。なお書面出願では、後日特許庁から送られてくる払込用紙により電子化手数料も支払います。電子化手数料は書面を特許庁側で電子データ化するための費用で、2,400円+800円×ページ数が請求されます。例えば書類合計が10ページなら電子化手数料は2,400円+(800円×10)=10,400円となり、出願料14,000円と合わせて24,400円が初期費用となります。書面提出は手続きのハードルが比較的低い反面、このように追加費用と手間がかかる点に注意が必要です。
  • オンライン出願の場合:インターネットを介して特許庁に電子的に出願書類を送信します。特許庁のインターネット出願ソフト(無料提供)を用い、電子証明書(電子署名用の認証)を取得して、自宅やオフィスのPCからオンライン手続きを行います。オンライン出願では紙の印紙ではなく電子納付で14,000円の出願料を支払います。電子化手数料は不要なので、その分コスト削減になります。また24時間いつでも送信でき、特許庁から受領通知や今後の書類送付も電子的に行われるため、迅速なやり取りが可能です。オンライン手続きに不慣れな場合は初期設定(ソフトのインストールや証明書取得)の手間がありますが、一度環境を整えればその後の手続がスムーズになります。特許庁も電子出願を推奨しており、後述する特許料の納付や年金管理もオンラインで行えば処理が迅速です。近年は多くの出願人や特許事務所がオンライン出願を利用しています。もっとも、オンライン出願に必要な電子証明書の準備にそれなりの手間がかかるため、頻繁に出願をする人でない場合は、紙出願の方がかえって手間が少ないかもしれません。

2.4. 出願時の注意点

出願書類を提出すると、特許庁から受領され出願日が確定します。出願日は特許権の存続期間計算(出願日から20年)の起算日となり、また先願主義の基準時となる重要な日付です。一度確保した出願日以降に他者が同じ発明を出願しても、こちらが先願となります

提出後しばらくすると特許庁から「出願番号通知書」が送付され、願い出た発明に特許出願番号が付与されます(オンライン出願の場合は出願と同時に出願番号がわかります)。この番号で以後の手続きを管理します。また書面出願の場合は先述の電子化手数料の納付用紙が数週間で届くので、指定期日までに支払いを済ませましょう。

方式審査への備え:提出書類に不備がないか、特許庁で方式審査が行われます。方式審査は書類の形式要件をチェックする手続きであり、発明内容の良し悪し(特許性)は判断しません。もし書類に欠落や記載ミスなど不備があれば、「補正命令」といって不足を補うよう指示する通知が届きます。指定された期間内に所定の補正書を提出して不備を是正すれば先に進めますが、期限内に補正しないと出願却下処分(形式不備による却下)となり、その出願は最初から無かったことになってしまうので注意してください。願書の記載漏れ、明細書の体裁違反、印紙代不足など基本的なミスがないよう、提出前に確認しましょう。

3. 出願後の手続:出願公開と出願審査請求

3.1. 出願公開(出願から1年6か月後)

特許出願をすると、その内容は原則として出願日から1年6か月後に公開されます。これを出願公開(公開特許公報の発行)といい、審査結果に関係なく出願内容が世間に開示される制度です。出願公開の目的は、他の人が同じ内容の発明を重複出願することを防止するとともに、技術情報を広く共有してさらなる技術発展に資する点にあります。公開公報には願書に記載された発明の名称や出願人名、そして明細書・請求項・要約書の全内容が掲載されます。

公開時期が1年6か月と定められているのは、出願内容の早期公開によって第三者が改良技術をすぐ出願するなどして、先に出願した人の不利益とならないよう配慮したためとも言われます。なお、出願人の希望により早期公開を請求することも可能です(後述する補償金請求権を行使するためなどに利用)が、通常の出願では1年6か月で公開されると考えてよいでしょう。

出願公開の効果:公開された出願はまだ特許権ではありませんが、「特許出願中」であることは公に示せます。製品の場合、パッケージ等に「特許出願中」と記載してPRできるほか 、発明が公開されることで他者が同じ内容を特許出願することは阻止できるという効果もあります。また、公開から特許査定までの間に発明を無断実施する第三者が現れた場合、後に特許権が成立した際に補償金請求(公開後~権利化までの実施に対する相当額の支払い請求)を行うことも可能です。したがって、審査請求をしていない未審査の出願であっても、出願公開には一定の意味とメリットがあります。

3.2. 出願審査請求(審査の開始手続き)

特許出願をしただけでは、ただちに発明の審査が始まるわけではありません。 日本の特許制度では、出願人自らが審査を望む案件だけを審査する請求主義を採用しているためです。出願後、特許庁で実体審査(発明内容の特許性審査)を受けるには、別途「出願審査請求」を行う必要があります。

出願審査請求は、出願日から3年以内であればいつでも可能ですが、この期間を過ぎるとその特許出願はみなし取り下げ(権利化を放棄したものと見なされる)となってしまいます。したがって、特許化を望む場合は必ず3年以内に審査請求をする必要があります。審査請求を行うと、出願は審査の順番待ちリストに入り、審査官による評価が開始されます。

審査請求に必要な提出物は出願審査請求書で、これは所定の様式に従って作成・提出します。審査請求時にも手数料(特許印紙代)が必要で、金額はやや高額です。特許の審査請求料は138,000円+(請求項の数×4,000円)と規定されており、たとえば請求項が10項ある場合は138,000円+40,000円=178,000円が審査請求料となります。この費用は特許庁に支払う公式な手数料であり、代理人に依頼している場合は別途代理手数料がかかる場合もあります。

審査請求のタイミング戦略:出願人の事情に応じて、審査請求のタイミングは調整できます。特に急いで権利化したい発明は、出願と同時に審査請求をしておくことですぐに審査待ち状態になるため安心です。一方、事業の状況や市場性を見極めたい場合、あえて審査請求をギリギリまで遅らせる選択もあります。審査請求を行わずに出願だけしておけば、先に述べたように「特許出願中」の効果で一定の牽制力を持たせつつ、不要になれば3年後に自動的に消滅させて余計な費用負担を避ける、という判断も可能です。実際、日本の近年の統計では審査請求率は約80%前後となっており、約20%の出願は審査請求されずに放棄されている状況があります。コストと権利化メリットを秤にかけ、審査請求するかどうかを検討するとよいでしょう。

なお、特許庁は出願から審査請求まで最大3年の猶予を認めていますが、だからといって権利化をむやみに先延ばしにするのも考えものです。次の項で述べるように、審査には一定の時間がかかるため、特許権化を急ぐのであれば早めに審査請求することが推奨されます。

4. 特許庁での実体審査と審査結果への対応

4.1. 特許の実体審査の流れ

審査請求が行われると、特許庁の審査官による実体審査(特許に相当する発明かどうかの審査)が開始されます。審査官は提出された明細書・請求項を精査し、発明が特許要件(新規性・進歩性・産業上利用可能性など)を満たすかどうか判断します。審査では国内外の先行技術文献との比較も行われ、発明が真に新しく非容易であるかがチェックされます。

審査にかかる期間:審査請求してから審査官から最初の通知が来るまでの期間は平均で約9~10か月程度と言われます。特許庁の公表データ(2020年)では、一次審査結果が出るまでの期間は平均10.1か月とされています。この最初の通知は、審査に合格していれば「特許査定」(特許を認める決定)という結果になり、不合格の場合は「拒絶理由通知」(特許できない理由の指摘)という形で届きます。審査官が即特許を認めるケースは多くなく、実際には一度は拒絶理由通知を受け取ることが多いです。

拒絶理由通知を受け取った場合、出願人(代理人)は指摘された拒絶理由を解消するため意見書の提出や明細書・請求項の補正(訂正)を行うことができます。意見書では審査官の指摘に反論したり追加説明を行い、補正書では請求範囲等を減縮したり明確化して特許要件を満たすよう修正します。これらの対応によって拒絶理由が解消されれば、審査官は特許査定へと判断を覆してくれることになります。

審査の最終結果まで:拒絶理由に対する反論・補正を行った後、審査官が再判断して特許を認めれば特許査定となり、引き続き特許料の納付手続きへ進みます。仮に対応後もなお拒絶理由が解消されない場合、審査官は拒絶査定(最終的な拒絶の決定)を出します。通常、拒絶理由通知→意見書/補正→特許査定 or 拒絶査定、という流れを1サイクルとし、通知が複数回に及ぶこともあります(2回目の通知を最後の拒絶理由通知と呼ぶことがあります)。最終処分(特許査定または拒絶査定)までに要する期間は、平均で14か月程度とされています。ただしこれは一例であり、分野や案件の難易度によって審査期間は前後します。意見書提出などのやり取りをすればその分長引くため、実務的には出願から権利化まで1年~2年程度を目安とすることが多いです。

4.2. 早期審査制度の活用

特許庁には通常の審査を前倒ししてもらう早期審査制度があります。ベンチャー企業が資金調達のため早く特許権化したい場合や、他社に先手を打って権利取得したい場合などに利用されています。一定の条件(出願人が実施している発明であること、侵害の恐れがあること、出願人が個人や一定の条件を満たす中小企業等であること等)を満たし、所定の書類を提出することで審査順番を優先的に繰り上げてもらえます 。追加の特許庁費用はかからず無料で申請できます(弁理士に手続きを依頼する場合の弁理士費用は別)。

早期審査を利用すると、審査請求から一次審査結果までの期間が平均3か月程度に短縮されるとの統計があります。大幅な期間短縮が見込まれるため、特に製品化を急ぐビジネスでは有効な制度です。早期審査の申請には「早期審査に関する事情説明書」という書類提出が必要で、出願の背景事情や先行技術文献の開示・比較説明など、専門的内容を盛り込む必要があります。手続き自体は代理人に依頼することも可能なので、ニーズがあれば活用を検討するとよいでしょう。

この早期審査について詳しくは、こちらの記事をお読みください。

4.3. 拒絶理由通知への対応と中間手続き

審査の過程でもっとも出願人を悩ませるのが拒絶理由通知への対応です。拒絶理由通知とは、審査官が「現状の請求項のままでは特許できない理由」を詳細に指摘してくる公式文書です。典型的な拒絶理由には、新規性の欠如(同じ技術が既に公知)、進歩性の欠如(容易に思いつく発明である)、明細書不備(発明の説明が不足・不明瞭)などがあります。

この通知を受け取ったら、まず指摘内容を精査し、対応方針を検討します。対応策としては主に2つ、意見書の提出手続補正書(補正請求の範囲や明細書の修正)の提出です。意見書では審査官の指摘に反論できます。たとえば「引用された先行技術と本発明はこの点で異なるため新規性は失われていない」といった技術的主張を行います。一方、補正書では請求項の限定を加えたり、明細書のサポート範囲でクレームを絞り込んだりして、指摘された拒絶理由を解消します。多くの場合、意見書と補正書を組み合わせて提出し、技術的にも形式的にも拒絶理由を潰す対応がとられます。

対応書類の提出期限は通常通知発送から60日(海外在住の場合は3ヶ月)で、延長も最大2ヶ月(海外在住の場合は3ヶ月)可能です。期限までに対応しないと出願は放棄とみなされてしまいますので注意してください。適切な対応によって審査官が考えを改めれば、その後特許査定が発行されます。しかし対応後も納得が得られなければ再び拒絶理由通知が来るか、最終的に拒絶査定となります 。

拒絶理由通知への対応について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

4.4. 最終処分:特許査定 or 拒絶査定とその後

特許査定が出た場合は、発明が特許として認められたことになります。一方、拒絶査定とは対応を尽くしても審査官が発明を特許不可と判断した最終結果です。拒絶査定になってしまった場合、そのまま権利化を諦めることもできますが、どうしても特許が欲しい場合は拒絶査定不服審判(審判請求)という手段があります 。拒絶査定に不服があることを特許庁内の審判部に申し立て、合議体の審理によって再度特許性を判断してもらうものです。審判を請求するには別途費用(請求項数に応じ、代理人費用のも含め十数万~数十万円規模の費用)がかかりますし、審理に1年以上の時間を要することもあります。成功すれば審判で特許査定に覆る可能性もありますが、見込みが薄い場合は費用倒れになりかねません 。審判を検討する際は弁理士と相談し、勝算があるか慎重に見極めることが重要です。

5. 特許査定後の手続:特許料の納付と特許権の発生

5.1. 特許料(登録料)の納付

晴れて特許査定が送達されたら、一定期間内に特許料を納付しなければ権利を得ることはできません。特許査定の謄本が届いた日から起算して30日以内に、所定の特許料(設定登録料)を納める必要があります。期限内に特許料の納付が確認されない場合、その出願は却下となり権利化が取り消されてしまいます。特許庁からは「特許料の納付がありません」というハガキの催告も届きますが、それでも支払わないと最終的に出願却下処分となります。せっかく審査に通った発明ですから、納付漏れのないよう早めに手続きを済ませましょう。

特許料の納付方法は、特許庁指定の「特許料納付書」を提出する形で行います 。オンライン手続きでも紙手続きでも可能ですが、オンラインの場合は電子計算による迅速な処理がなされ、提出から登録まで3日以内で完了するのが通常です。紙で提出すると書類の電子化作業等で+3週間程度余計に時間がかかります 。オンライン出願ソフトから納付書を送れば、特許庁側での処理完了後すぐに登録の通知を電子受領できるため、スピーディーです。

納付すべき特許料の額ですが、特許料は特許権を維持する年数に応じて変動する年金形式となっています。特許査定後の初回納付では、法律で第1年分から第3年分までをまとめて納付することが定められています。金額は請求項の数によって多少変動します。具体的には、1年分あたり「4,300円+(請求項の数×300円)」の計算式で、第1~3年分を3年一括納付します 。例えば請求項の数が5項なら、1年分は4,300+(300×5)=5,800円、これを3年分で17,400円が初回納付額となります。請求項が10項の場合は(4,300+3,000)×3年=22,900円ほどです 。このように特許料は比較的低廉ですが、年数が進むにつれ額が上がっていく点に留意してください(後述)。

特許料の納付が完了すると、特許庁により特許権の設定登録が行われます 。登録処理が終わった段階で、発明は正式に特許権として成立し、その設定登録日から権利効力が発生します 。同時に特許公報(特許掲載公報)が発行され、発明が特許になったことが公告されます。登録後、出願人には特許証が交付されます。紙送付を選択した場合は設定登録日から約2~3週間後に特許証(賞状のような形式)と登録通知書が郵送で届きます。オンライン送付の場合は、設定登録日の翌週2開庁日目(約1週間後)にはインターネット出願ソフト上で特許証のデータを受領可能となります。

こうして発明者は正式に「特許権者」となり、出願日から20年にわたる独占権を手にすることになります。

5.2. 登録後の年金管理と権利の維持

特許権を取得した後も、毎年の年金(特許料)を納め続けないと権利は維持できません。先述のとおり、初回は第1~3年分をまとめて支払っていますが、第4年目以降は毎年分の特許料をその年の前に納付していく必要があります。納付期限日は通常、設定登録日から数えて支払済み年の満了日までであり、例えば登録日が2025年8月1日で第1~3年分納付済みなら、次の第4年分の期限日は2028年8月1日となります(※厳密には末日が休日なら繰り越し)。期限までに納付すればさらに1年権利を延長できる仕組みです。まとめて前納することも可能で、何年分かを一括で早めに払っておくことで手間を省くこともできます。

特許料は存続期間が長くなるほど高額になります。具体的には、第1~3年は比較的低額(例:請求項1つだと年4,600円程度)ですが、第4~6年は一段上がり(同約11,100円/年程度)、第7~9年はさらに上昇(同約26,700円/年程度)、そして第10~20年はかなり高額(同約64,000円/年超)となります。このように後半ほど維持費が上がるのは、古い特許の整理を促すための制度設計でもあります。事業にとって重要な特許であれば最後まで維持費を払い続ける価値がありますが、そうでなければ途中で権利を手放す(あえて年金を支払わない)判断も起こり得ます。

万一、年金の支払いを期限までに忘れてしまった場合でも、直後であれば救済措置があります。日本では納付期限を過ぎても6か月以内であれば「追納期間」として特許料を支払うことが認められています。ただしその際は本来の額に同額の割増料を加えて納める必要があり、実質2倍の費用負担となります。6か月の追納期間も経過してしまうと特許権は消滅しますが、やむを得ない事情があった場合にはさらに一定期間内であれば権利回復の申立てができる場合もあります (近年、天災などの理由で期限を過ぎた場合の救済規定も整備されています)。とはいえ日頃から管理を徹底し、年金納付漏れがないようスケジュール管理することが大切です。

5.3. 権利の活用(実施・ライセンス・権利行使)

特許権が発生した後は、その発明を独占的に実施できる権利者として様々な戦略が考えられます。自社で製品・サービスに活用して市場優位性を確保することはもちろん、他社にライセンス(実施許諾)を与えてライセンス料収入を得ることも可能です。特許権は法律で排他的権利として強力に保護されており、無断で発明を実施する第三者がいれば差止請求(製造販売の停止要求)や損害賠償請求を裁判で行うことができます。実際に他社に権利侵害された場合には、証拠を収集した上で警告書を送付したり、必要に応じて訴訟提起するなどの対応を検討します。特許権侵害は民事上の不法行為のみならず故意であれば刑事罰の対象ともなり得るため(特許法第196条)、特許権者は法律に基づいて自らの権利を守ることができます。

一方で、特許権を保有するだけでは自動的に利益は生まれません。権利を活かすも殺すも運用次第です。自社で製品展開しない特許であっても、他社にとって有用ならライセンス交渉の材料になりますし、必要に応じて特許権を譲渡(売却)することも可能です。特許権は企業の知的資産として、事業戦略や交渉の武器にもなります。権利取得後は定期的に自社の特許群を見直し、その維持方針や活用方針を検討しましょう。

最後に、特許権は原則として出願日から20年間存続します (医薬品等は一定の延長制度あり)。この長い期間、年金を払い続けることになるため、権利の価値とコストを天秤にかけて適切に維持管理することが大切です。特許を取得したら安心ではなく、そこから先も戦略的な権利運用が求められます。

まとめ

以上、特許出願から登録までの流れを順を追って説明しました。特許取得は、発明の着想→出願準備→出願手続→審査→登録→維持管理という長いプロセスです。各段階で必要な費用も発生し、出願から特許権取得まで平均1年~2年程度の期間を要します 。この流れを把握しておくことで、今自分がどのフェーズにいるか、次に何をすべきかが明確になるでしょう。特許出願の流れを理解し、適切に対応することで、大切な発明を強力な権利として活用できるようになります。

  • 費用の目安まとめ:日本国内で特許権を取得するまでにかかる主な特許庁手数料は、出願時14,000円 +審査請求時約150,000円 +登録時数万円(請求項数による)です。これに加え、代理を依頼する場合は特許事務所への依頼費用(明細書作成費用や中間処理費用など)が数十万円規模かかるのが一般的です 。トータルでは50万~60万円前後の出費になるケースが多いと言われます。もちろん案件の難易度や事務所によって変動しますが、出願前に概算コストを把握しておくことも重要です。
  • よくあるトラブルと注意点まとめ:特許出願の各段階でありがちなミスやトラブルとしては、(1)出願準備不足(先行技術調査を怠り既出発明を出してしまう、新規性喪失の公表をしてしまう等)、(2)書類不備(願書の記載漏れ・様式違反、印紙貼り忘れなど) 、(3)審査請求忘れ(3年以内に請求せず権利を失念) 、(4)中間対応の遅れ・不適切(拒絶理由通知に期限内に対応しない、反論が的外れで再度拒絶を招く) 、(5)料金の納付漏れ(特許料30日以内の支払い忘れによる権利化失敗 、年金の期限管理ミスによる権利消滅 )などが挙げられます。これらは基本的な注意を払っていれば防げるものも多いです。手続期間の管理や書類チェックを徹底し、必要に応じて専門家のサポートを受けながら進めると安心でしょう。

特許出願の流れを把握し、事前準備と適切な対応を行えば、スムーズに大切な発明を権利化できる可能性が高まります。ぜひ本記事の内容を参考にして、特許出願の流れを踏まえた計画的な知財戦略を立ててみてください。知的財産は取得してからが本番です。しっかり権利を確保し、有効に活用していきましょう。

高品質な特許出願を、誰でもカンタンに

Toreru 特許®︎ は、経験豊富な弁理士が最新のテクノロジーを最大限に活用し、高品質な特許を、誰でもカンタンに利用できるようにしたサービスです。これまでむずかしかった「安心」と「カンタン」を両立しました。

一般的に特許出願サービスはお客様にとって複雑で高価格なことが多いですが、Toreru 特許®︎ では、誰でも手軽に高品質な特許出願が可能です。

  • オンラインで完結: 特許出願の手続きがすべてネットで完結。気になる出願状況も、見返したい書類も、マイページからすばやく確認できます。
  • 安心の弁理士サポート: テクノロジーに精通した弁理士が、特許の品質を守り、親身にサポートします。
  • リーズナブルな料金: 誰もが安心して特許出願できる、予算に優しいシンプルな料金を実現しています。
  • 発明相談は無料: AIによる事前ヒアリングや、弁理士とのWebミーティングをもとに、あなたの発明の要点を整理した第三者視点の「発明提案書」を作成します。発明相談~発明提案書の受け取りは、なんと無料です。

革新的なアイデアをビジネスの強みにするために、まずは Toreru 特許®︎ をチェックしてみませんか?

Toreru 公式Twitterアカウントをフォローすると、新着記事情報などが受け取れます!